『氷点』の舞台となった林にあります
日本で韓国語教師をされている韓国人の方が「私が一番好きな作品が『塩狩峠』で、北海道にある記念文学館は一度行きたいところです!」と熱く語っていたことがあります。
私も以前『氷点』や『塩狩峠』を読んですごく感銘を受けた作家さんです。今回はその記念文学館の訪問記です。
車で行くのがベストですが、車でない場合はJR旭川駅南口からだとタクシーがおすすめです。徒歩だと30分ほどかかります(-_-;)
駅を出てすぐの橋を渡るときは、橋の名前が書かれた「氷点橋」の表示を見つけてください。『氷点』の舞台の街だと実感できることでしょう♬ そしてタクシーの車窓から橋の下を流れる忠別川を見ることをお忘れなく。川岸の風景がきれいです(*'▽')
■三浦綾子記念文学館
■本館1階
1階の展示室には三浦綾子さんの生い立ちから学生時代、小学校教諭時代、闘病生活時代、そして作家として活躍する時代までについて、写真や直筆の資料などとともに知ることができます。
私が「すごい!」と思ったのは14歳の時に書いた「井伊大老について」という原稿用紙6枚の作文です。「す、すごい」とつぶやきながらページをめくっていました。とても14歳の文章ではないのです。カラーコピーなのかと思いますが、万年筆で原稿用紙に書かれた作文をそのまま手に取って読むことができます。
ご本人が「病気のデパート」と言っていたというくらい本当に次から次へと病気にかかっていた方です。人生の大半を病と闘いながらも多くの作品を発表してきたことに驚かされます。そしてキリスト教を通じて出会った伴侶である光世氏との愛と信頼関係なくしてはどの作品も誕生しなかったのだと知ると、なんとも厳かな気分を抱かずにはいられなくなります。
展示物すべてではないのですが、壁面の展示には日本語のほかに英語、中国語、韓国語での翻訳が添えられているものもありました(#^^#)
■本館2階
展示室は2階に続きます。階段の踊り場の青いステンドグラス越しに見える林の緑が映える素敵な空間です
2階では企画展をやっていました。
企画展2024「三浦綾子文学を照らした三つの光~三浦光世生誕100年・没後10年の企画展」
期間: 2024年4月2日~2025年3月20日
三浦綾子作品はご主人である光世氏との二人三脚で書き上げられたものです。『氷点』というタイトルもご主人の光世さんが思いついたものだそうです。
そのほか北海道出身で2024年に『ともぐい』で直木賞を受賞した川﨑秋子さんは10年前の2014年に『颶風の王』で三浦綾子文学賞を受賞されていたこともありました。三浦綾子文学賞選定時の資料なども展示されています。
2階でも素敵なスポットがあります。
森を見ながら休憩ができる落ち着けるスペースです。
このスペースに限らず、館内に展示してある本は座って読むことができるようになっています。空いていれば何時間でもこの空間で読書したくなるような雰囲気です。
■分館
本館のすぐ脇に分館の建物があります。こちらには三浦綾子・光世夫妻が執筆活動をした書斎を移設復元されています。
この復元書斎の手前のスペースには『氷点』『続氷点』のエッセンスがわかる展示があり、本を読んだことがない人でもこの展示を見たら本を買いに走りたくなるのではないかと思いました(*'▽') わたしもまた読みたくなりました。ウズウズ・・・
この展示室のすぐ手前には空腹を満たし疲れを癒してくれるカフェも併設されています☕
訪れた日、私は時がたつのも忘れてライブラリーの本をじっくり読みこんでしまい、カフェはすでに締まってました。残念(T_T)。カフェは16時までです。休憩時間も予定に入れて展示室をまわることをおすすめします♪
■韓国語リーフレット
韓国語でのチラシも準備されています。
A4両面の3つ折り仕様です。表紙にある書籍は『氷点』の表紙です。韓国語タイトルは『빙점』[ピンチョム]です。
■ショップ
記念館の中、受付前には三浦綾子さんの著書のほか、関連本などが買えるショップもあります。オリジナルのエコバッグやコーヒーカップ、キーホルダー、ブックカバーなども良い記念になります。
2階の書棚にもあった本『三浦綾子生誕100年+α 記念文学アルバム ひかりと愛といのちの作家 増補版』はこの文学館が出した本です(初版刊行2023年12月1日)。三浦綾子さんのすべてがわかる内容の本で、わたしの一番のおすすめです。
この本を読んで思わず「!」と思った興味深いエピソードが2つあります。
ひとつめは、夫となった三浦光世氏はキリスト教信者の方から『病床に伏せる堀田綾子さんを訪問して祈ってあげてください』というような内容のハガキを受け取り、そのハガキを携えて実際に訪問したのでしたが、その紹介をされた方は光世氏はその名前からして女性だと思って依頼していたのだそうです。知らない男性の訪問でしたが光世さんの祈りに感動したことから後の結婚相手になっていったそうで・・・。神のお導きがあったのですね。
ふたつめは、『氷点』で朝日新聞社から出た賞金は1000万円でしたが、「そのうち450万円は税金だった」と三浦綾子さんの自作年譜の中の記載を見つけ、「そんなに取られるの⁉」と私までちょっと残念に感じてしまいました(;^_^A
1964年の1000万円は現在のいくらになるのでしょう? 1億円? 2億円? その45%が税金と考えると「!」の数も10倍、20倍、いやそれ以上かも(*_*)
■見本林を散策する
文学館を出たら、周りを囲む見本林を散策する楽しみも残っています。
■まとめ
三浦綾子さんは旭川の文学者といえば・・・のまず最初に挙げられる作家さんではないでしょうか。旅行する機会に半日ほどをこの記念文学館で過ごせば「心の贅沢」を味わえると思います。
作品はどれも心の内を洗い流してくれるような、人間の真理を考えさせられるような、家族や友人、周りの人たちに愛を感じられるような読後感をもたらしてくれる作家さんですから。
日本語版でも再読したくなっているところですが、韓国語版にすごく興味がわいています。次に韓国に行ったら『氷点』(韓国語版は『빙점[氷点]』)や『塩狩峠』(韓国語版は『설령[雪嶺]』)を本屋さんで見つけてきたいなと思いました。
自分の好きな本が韓国の方にも人気な本であることに、고마워★コマウォ★ありがとう!